長い間、ウンチを少ししかしてこなかったネコちゃんです。
かわいそうにあまり食べなくなり、時々嘔吐していたとのことです。
おなかを触診すると前の方まで続く大きく膨らんだ結腸が触れ、中にあるウンチは硬そうです。
便秘であることは触診だけでも充分様子がわかるのですが、他の異常の有無、骨盤の変形の有無を確認するために腹部のレントゲン検査をしました。

赤の点線の内側が結腸で、内部にもしゃもしゃあるのがウンチ、詰ったウンチによって径が大きくなった直腸が横隔膜の方まで続いているのがわかります。
骨盤に緑の線を引いておきましたが、緑線の長さが骨盤腔の横径で、丸い穴に見える骨盤腔を通ってウンチは出てきます。
ところが、結腸にウンチが溜まりすぎて大きく広がってしまい、青線の幅まで結腸(=ウンチの太さ)は薄く広がってしまい、それより狭い骨盤腔を通過するのはかなり困難であることは容易にわかると思います。
このように、大きく拡がって収縮力も弱まってしまった結腸を「巨大結腸症」と呼びます。
原因としては、
先天性:生まれつき結腸の一部が狭く、そこで便通が悪くそれよりも前方が押し広げられてしまったものや、結腸の蠕動運動を調節する自律神経系に先天的な異常があるもの等。
後天性:病気や事故によって、自律神経に異常が生じ、蠕動運動がうなくいかず、便を停留をさせていたり、骨盤骨折のために周囲組織が損傷したり骨盤の物理的な変形のために便が通過が困難になったもの。
特発性:これといった原因もなかったのに、長い間便を滞留させがちにしていたために便が結腸を拡張させ蠕動運動もうまくいかなくなってしまった。
等、原因は様々ですが、下剤や浣腸でも改善しずらい重症便秘が特徴です。
治療には、
1.浣腸や下剤により排便を促したり用手による摘便。その状態によっては逆に症状を悪化させてしまう可能性もありますので、自己判断は禁物です。
2.食事療法:便秘になりにくい食事を与えますが、これも食物繊維の摂取により便の体積を増加させ、症状を悪化させることがあります。
3.外科手術:停滞してしまった大量の便を開腹により全部取り出し、長い間便の停滞により薄く拡張し、蠕動運動機能も麻痺してしまった結腸部を摘出します。特に重症例では術後下痢になることもありますが、多くは回復してきます。